メシマコブネットワーク 日本家庭医学普及協議会



「第61回日本癌学会総会」
2002年10月1日(火)〜3日(木) 会場:東京国際フォーラム

 ヌードマウスを用いたヒト膵がんに対する(メシマ菌糸体、シイタケ菌糸体、酵母エキス、ビタミンC)の抗腫瘍効果

島添隆雄1、瀧口総一2、崔清平2、間宮群二3、渡辺繁紀1 (1九州大学大学院 薬学研究院 薬効解析学分野、2九州がんセンター臨床研究所、3笙嘉生命科学研究所)


目的
 近年、がん治療においてβ−グルカンを始めとする配糖体を含有する菌糸体が注目を浴びている。そこで、本研究はがんの中では難治とされるヒト膵がんのcell lineを用いて、メシマコブ、シイタケ、グルタチオン、ビタミンCが配合されたSHOMEの抗腫瘍効果について検討した。

方法
[ヒト膵がん細胞株]
 本実験に用いたヒト膵がん細胞株、KP−1NまたはKP−1NL(膵管上皮由来)、SUIT−2(膵管上皮由来)およびQGP−1N(ラ氏島由来)である。

[In vitro細胞毒性試験(MTT assay)]⇒図1,2参照
 細胞は通常の条件(37℃、5%CO2)で培養した。使用培地はダイゴのT基礎培地(和光)に10%FCS(JRH)を添加し80〜90%コンフルエントまで培養し使用した。トリプシンで剥離したのち、96well plateにそれぞれ膵がん細胞数SUIT−2 200cells/100μl/well、KP−1N300cells/100μl/well、KP−1NL300cells/100μl/well、QGP−1N 1000cells/ 100μl/wellで播種する。37℃24時間培養後、SHOME(in 100μl medium)を添加、さらに37℃48時間培養する。その後、洗浄2回(with 100μl medium)を行い、培地200μl/wellを添加し、さらに37℃5日間培養する。各ウエルの細胞増殖は、MTT assayにより解析した。具体的には、MTT(Sigma)は、濃度が5mg/mlになるようにDulbecco’s PBSに熱湯で暖めて溶かし、10μm filterでろ過した溶液を使用した。培養液にMTT溶液を10μl/well添加し、37℃4時間インキュベートし、1500rpm 10minで遠心後上清を捨て、DMSO 100μl/wellを添加し、水不溶性の青色フォルマザンを溶解した。吸光度測定は、TOSOH MPR−A4で、FILTER R620nm S540nmの条件で行った。

[in vivo 実験・1]⇒図3〜6参照
ヒト膵がんcell lineであるKP−1NまたはQGP−1N(1.1×107 cell)をヌードマウスの皮下に移植し、移植当日よりSHOME(2mg/ml)を飲水として与えて、その後の腫瘍形成を観察した。

[in vivo 実験・2]⇒図7,8参照
 KP-1N移植後、腫瘍形成が肉眼で確認できるレベルに達してから、SHOME(2mg/ml)を飲水として与えて、その後の腫瘍の増殖を計測した。

[肝転移モデル実験]⇒写真1〜4参照

結果および考察
 MTT assayにおいて、SHOMEは極めて高濃度でのみヒト膵がん細胞の増殖を抑制した。また、SHOME飲水によってもマウスの体重等、滅菌水飲水と変化はなかった。このことから、細胞毒性は低いことが推察される。
 In vivo実験・1において、SHOME飲水によりKP−1Nの腫瘤はまったく形成されなかった。
 また、in vivo実験・2においても、KP−1Nの増殖は、SHOME飲水により滅菌水飲水に比べて明らかに抑制された。本実験の結果は、SHOMEが著明な抗腫瘍効果を有しており、特に予防効果が期待できる可能性があることを示唆している。しかしながら、ラ氏島腫瘍であるQGP−1Nの増殖は抑制しなかった結果は、がんの種類によって抑制効果が異なることを示唆している。
 以上、SHOMEは抗がん作用を有していることが明らかになった。その詳細な機構については今後検討する予定であるが、ヌードマウスにはT−cellがないことから、T−cellを介した免疫機構以外の作用によることが考えられる。


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